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集団的自衛権閣議決定について

文責:YRP野比 投稿日:平成26年(2014)7月12日


今月初め、喧しい集団が官邸前で大騒ぎするなかようやく集団的自衛権についての閣議決定がなされた。この閣議決定は日米安保の片務性解消及び将来アジア地域での集団安全保障体制への参加へ道を開くものであり心から歓迎したい。

しかし、この集団的自衛権についての本格的議論が始まった去年暮れから現在に至るまでの間、多くのメディアで集団的自衛権についての根本的な誤解の拡散と特定のイデオロギーに基づく煽動が繰り返されてきた。その「多くのメディア」とは一体どの会社を指すのかとか、その「特定のイデオロギー」とは具体的に何であるかについては今更言うに及ばないことなのでこのコラムではあまり触れないことにする。

今回は公器としての自覚が全く無い彼らが今まで無責任にまき散らしてきた集団的自衛権についての誤解や煽情の一つである「内閣法制局は憲法の番人である」という誤解を取り上げて反駁していこうと思う。



そもそも内閣法制局とは何であろうか、その設置法である内閣法制局設置法を確認する。


(設置)

第一条  内閣に内閣法制局を置く。

(法制局長官)

第二条  内閣法制局の長は、内閣法制局長官とし、内閣が任命する。

2  長官は、内閣法制局の事務を統括し、部内の職員の任免、進退を行い、且つ、その服務につき、これを統督する。

(所掌事務)

第三条  内閣法制局は、左に掲げる事務をつかさどる。

一  閣議に附される法律案、政令案及び条約案を審査し、これに意見を附し、及び所要の修正を加えて、内閣に上申すること。

二  法律案及び政令案を立案し、内閣に上申すること。

三  法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること。

四  内外及び国際法制並びにその運用に関する調査研究を行うこと。

五  その他法制一般に関すること。

(主任の大臣)

第七条  内閣法制局に係る事項については、内閣法 (昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

出典:内閣法制局ホームページhttp://www.clb.go.jp/info/syokan/settihou.html



以上の条文から分かるように、内閣法制局は読んで字の如く内閣の一部局であり、その所掌事務は簡潔に言えば「法律案や法律問題について内閣の補佐をすること」であり、主任の大臣が内閣総理大臣と規定されているので法制局は内閣総理大臣の指揮下に属する機関なのである。


これのどこが「憲法の番人」なのであろうか。

内閣法制局はあくまで、内閣が提出する法案を事前にチェックして意見を具申するだけ機関であり、政府の憲法解釈を決定する権能もまして司法の機能として憲法を解釈する権能などは与えられていない。

「政府の憲法解釈」を決定する権限は、今年2月12日の衆院予算委員会で安部首相が「(政府答弁の)最高の責任者は私だ。私が責任者であって、私たちは選挙で国民から審判を受けるんですよ。審判を受けるのは、法制局長官ではない。」と述べた通り首相にある。

だが、「法制局は憲法の番人でなく総理の部下である」という法律通りの理解に立てば至極当然のこの発言は支離滅裂な非難に晒された。


・朝日新聞(社説)集団的自衛権 聞き流せぬ首相の答弁

http://www.asahi.com/articles/DA3S10979953.html

・しんぶん赤旗 歴代政権にも背く安倍改憲暴走 立憲主義否定「最高責任者は私だ」

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-02-15/2014021503_03_1.html

・北海道新聞(社説)集団的自衛権 内閣法制局 「憲法の番人」の使命を

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/548073.html


彼らによれば首相の発言や法制局長官に集団的自衛権容認派の小松一郎氏を起用したこと、政府の憲法解釈を変更することは「立憲主義」や「法の支配」の破壊であるのだという。

※確定判決として違憲とされた憲法解釈を政府が閣議決定したならば「立憲主義」の破壊と言えるだろうが、集団的自衛権について裁判所はこれまで違憲合憲の判断をしていない。

法律の規定通りに人事権を行使し下部組織を運用することが立憲主義・法の支配の破壊で、政府の憲法解釈において法制局が内閣に優越するという法的根拠無しの下克上を容認することが立憲主義・法の支配の貫徹というのならば、内閣法制局設置法はとんでもないものであるから、彼らは直ちに違憲訴訟を起こすべきなのではないだろうか。

真の「憲法の番人」とは憲法によって違憲立法審査権を含む司法権を与えられている裁判所以外の何物でもないはずだ。そして、その真の憲法の番人が首相によって変更された「政府の憲法解釈」を認めた時に始めて憲法の変遷という意味での「解釈改憲」の成立と言えるのではないだろうか。

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